カナコラム  (更新 月曜:かなこ、木曜:endy )

44マグナム事件 by endy

2004/07/08

ども、困ったときにはヘルプミーのendyです。

●シューティングがしたい

私の初めての海外旅行となったグアムへの社員旅行は、ものすごい貧乏旅行でした。
何しろお小遣いというものがほとんどありませんでしたので、「みんなでどこかに行こう!」と誘われても一緒に行くことができませんでした。

3泊4日の短い旅行もいよいよ最終日となった日、誰かが「シューティングがしたい」と言い出しました。
シューティング、いわゆる実弾射撃というヤツです。
日本では、特殊な職業もしくは資格を持っていないと体験できないことです。
私も男の子のはしくれ、鉄砲の一発も撃ってみたいと思うのが正直なところ。
しかし旅行も最終日、ただでさえお金がなかったのに最終日にお金が残っているわけがあ
りません。
それでも雰囲気だけでも味わいたいと、みんなについていくことにしました。

●44マグナム

シューティングのお店は、外観はいかにもお土産屋の様相を呈しておりますが、中に入るとショーケースの中に映画や雑誌でしか見たことのないピストルが並んでいます。
コルト、ルガー、スミス&ウェッソン、ベレッタ、ワルサー・・・etc.
それは貧乏な私にも、忘れかけていた少年の心を呼び起こすのに十分でした。

その中にひときわ私の目を引いたものがありました。
44マグナム。
そうです、あの映画「ダーティ・ハリー」でクリント・イーストウッド扮するキャラハン刑事が愛用していた、象をも倒すと言われているピストルです。
吸い込まれるような重く鈍い鉄の質感が私の心を揺さぶります。

しかし悲しいかな、私の残金は全部合わせてもマグナムの使用料には足りませんでした。
仕方なしにはしゃぐ同僚をやや距離を置いて受付のあたりで見つめておりました。
マグナムかぁ・・・きっと引き金を引いた瞬間はズドーンと腕に来るんだろうな、反動で銃口は上を向くだろうからやや下を向いて撃ったほうがいいな、などと想像を膨らませて。

●記念の品

そんな私の視界にあるものが映りました。
それは受付のカウンターの内側にありました。
内側といってもそれは余裕で手の届くところです。
なんとそれはピストルの弾だったのです。
それらは小さな箱に入れられてびっしりと並んでいました。
そしてその箱には「MAGNUM」の文字が。
さらにその中のひとつの箱は、ぱっくりと口を開いていたのです。

私の心はグラグラ揺れました。
お金がないから撃つことはできないけど、弾1個くらいだったらもらってもいいかな・・・。
いいわきゃありません・・・。
が、私の手の中にはしっかりと重みを感じる小さな鉄の塊が握られていたのです。
これは記念になる・・・。
そう思いつつ、その「記念の品」をショルダーバッグの中の底に忍ばせました。

そろそろ帰りの飛行機の時間が近づいたので、空港に向かうことにしました。
私が「記念の品」をゲットしたことは誰にも言いませんでした。
日本に帰ってから驚かせてやろう、ぐらいに思っていたんでしょう。

●アイドンノー!

さて搭乗手続きが始まったので、その列に並びました。
そばには小さなTVモニターがあり、みんな手荷物をベルトコンベアの上に載せています。
さ、私の番がやってきました。
何の疑いもなく持っていたショルダーバッグをベルトコンベアの上に。
すると黒人女性の手荷物検査係の人が、立ち去ろうとする私を呼び止めます。

「ウェラ、ミニッツ!」

「は?」
TVモニターに映された私のショルダーバッグの底に、どう見てもピストルの弾にしか見えない影が映し出されていました。
あ・・・、やってもーた・・・、X線やんか。

「ゥワァーッツ、ディィース?」

ゆっくりと尋ねる係の人の人差し指と親指には、紛れもなく「記念の品」になる予定だったマグナムの弾がつままれていました。
えーい、仕方ありません、アホのフリをするしか。

「アイドンノー、アイドンノー、アイドンノー・・・。」

何を聞かれても、迷子の子猫ちゃんのように「アイドンノー」を繰り返しました。
係の人も呆れたのか、首を横に振りながら「オーケー」と言って通してくれました。
もちろん「記念の品」は没収です。
目もうつろになりながらその場を立ち去ろうとする私の背後から、追い討ちをかけるように再びあの声が聞こえました。

「ウェラ、ミニッツ!」

こ、今度は何だ!やっぱり逮捕か・・・。
振り向くと呆れ顔の係の女性が、手に搭乗チケットを持ちヒラヒラさせています。
顔を引きつらせながらそのチケットを受け取ると、同僚が待っている待合室にスゴスゴと
向かいました。

考えてみれば恐い話です。
これが世界同時多発テロの直後だったら、今頃どこにいたもんだか。
「記念の品」にマグナムの弾はよろしくないようです。

よい子のみんなはマネしないでね!(・・・しまへん。)

函館音楽協会春季定期演奏会第92回函館三曲協会演奏会のリポートをアップ。

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