カナコラム  (更新 月曜:かなこ、木曜:endy )

暑い夏の寒い話 by かなこ

2004/07/05

野外ライブといえば気候の良い時期に開催されることが多いですよね。
お祭り的爽快さを想像しますでしょ?
野外ライブとは若干雰囲気は異なるかもしれませんが、四季を通して「○○フェスティバル」といった野外での催し物が近年多くなっていますよね。

さて今日は「冬」での野外演奏の思い出を書きます。

それは毎年盛大に開催される「札幌雪祭り」でのことなんです。
私が正派音楽院の研究科で学んでいたころの話。(=昔の話)
ある詩吟の先生から、雪祭り会場での詩吟の伴奏を頼まれた母。
母は幼い頃から足が不自由で(小児麻痺)、外出時は松葉杖無しでは歩けませんから、冬の雪道は苦手ですし怪我に要注意の時期。
冬はあまり外出しない時期なのです。
が、親しい方からの依頼なので母はお断りできなかったらしく、私に伴奏させるからと約束をしたのでした。
母からの電話で事情を知り、札幌雪祭りを見た事がなかった私は「雪祭りが見られるー!」とワクワク気分で代役を引き受けました。

甘かった・・・。
雪というより氷で出来たステージ=氷上舞台に筝。
不安定この上ない筝の台。
椅子とて滑る。
若干の傾斜にも譜面台はスケートのように滑って行く・・・。

急遽即興伴奏に変更させていただき譜面台は置かないことにしましたが、寒いこと寒いこと・・・。
おまけに演奏が始まったと同時くらいから吹雪き模様。
ジャケットのポケットにはカイロ。
(その頃はホッカイロは無かったのでハッキンカイロ?)
筝に降りかかる雪を払いつつ、指先はジンジンとしびれるように冷たい。
ステージ下のお客様から「寒いでしょ?大丈夫?」と心配してもらいつつも、「いいえ、大丈夫ですよ!」と言う声がすでに凍えてる・・・。
筝が濡れるという最悪の事態を避けるため、早々に伴奏を終えさせていただき舞台から降りました。
されどステージでのパフォーマンスは続く・・・。

詩吟はといえば、マイクの調子がすこぶる悪くハウリングしっぱなし。
騒音でしかない状態。
ステージ中央での「書道吟」では、大きな白い紙に書く文字の墨が片っ端から降る雪に流されて文字が判読できないズルズル状態。
(ぜ〜んぶ雫がしたたる涙文字?)
続いてのステージは剣舞。
ステージには薄い板状のものがセットされましたが、それとて滑る滑る。
真剣な表情で舞う剣舞の先生も、滑る板の上ではバランスがとれない・・・。
板と一緒に滑る滑る。
横で見ていた私は、不謹慎にも「ドリフターズ」のステージのギャグを見ているようで、笑いをこらえるのが必死。
詩吟の先生曰く、

「吹きっさらしの外での公演とは思っていなかったのさ。屋根くらいかかってると思ってたんだけどな〜。イヤ〜大変だったわ!」
(打ち合わせは密にしなければマズイですね。)

とりあえず無事でもないですが終えて、翌日はルンルン気分で雪祭り見学!
雪像の見事な出来栄えに感動し「来た甲斐があった!」
はてさてお仕事だったのかお遊びだったのか・・・。
寒かったけど面白かった思い出話でした。

函館音楽協会春季定期演奏会第92回函館三曲協会演奏会のリポートをアップ。

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