カナコラム  (更新 月曜:かなこ、木曜:endy )

楽器欲しい病 by endy

2004/01/15

●本人しかわからない価値

私はベースという楽器を弾き始めて、もう30年近くになります。
全ての音楽家がそうだとは言いませんが、多くの彼等はいい楽器を欲しがるものです。
私もそういう輩の一人でして、学生時代はバイトで稼いだお金をほとんどつぎ込み、給料をもらえるようになってからは、長い長いローンを組んで目当ての楽器を手に入れたものです。
挙句の果てには遠い海の向こうにまで、40年も昔の見た目ボロボロの楽器を買いに行ったりもしたりするわけです。

やっかいなのは手に入れた楽器の価値を、本人以外にはなかなか理解が得られないこと。
「何十万もする楽器が何本も必要あるのか?」
 ハイ、必要アリマセン。
「こっちの数万円のと、その数十万のはどれほどの違いがあるというのだ?」
 ハイ、オソラク私ニシカワカライカト・・・
「わざわざ高い金払ってボロボロの楽器を買う必要があるのか?」
 モチロン必要アリマセン。
「何本も持ってたって、手は2本しかないんだから弾くのは1本だろ?」
 1本デモ大変ナクライで・・・。
「そんなに高い金出して買ったけど、ウチで弾いてるの見たことないぞ」
 アイタタタ・・・

とこんな具合です。
それでもいい楽器をみつけると、瞳孔が開き、ヨダレは唇から流れ、頬擦りしたくなる。
まさに「楽器欲しい病」の発作です。
ミュージシャンなんてそんなバカな人種なわけです。

(あ、そうでない人もいます)

●片思いの遠距離恋愛

函館には「よい楽器」を置いている楽器屋が残念ながら少ないので、東京にいる頃に比べて「楽器欲しい病」の発作は起きませんでした。
2年程前、あるハンドメイドベース工房のサイトを見つけ、そこの職人さん(一人でやってるんですけど)の考え方が気に入って、現在までずーっと片思いの遠距離恋愛を続けています。

毎日覗くBBS(ネット上の掲示板)に、ある日こんなことが書いてありました。
「僕(推定40歳)は、年間20本のベースを製作している。このペースで作り続けるとすると、あと20年、400本しか作ることはできない。ということは多くてもたったの400人しか僕が作ったベースを弾くことはできない。いや、ウチのお客さんはリピーターになる確率が高く、一人で2本、3本購入する人も多いので、実際には300人にも満たないかもしれない。そう思うと寂しい気もするが、だからこそ魂を込めて作りたい」

これを読んだ時、「あー、このベースを絶対手に入れなくてはいけない」と思ってしまったのです。<=ナゼ、ソーナル?
悪いことにそのお店は東京にあり、店主曰く「まずは弾いてくれ」。
そーか、作ってもらう前に弾かなくてはいかんのか!
ということは東京に行かないといかんのだ。
ここでベースの価格に往復の飛行機代が加算されるわけです。

●ついにご対面の時が・・・

かくして、毎日毎日HPのBBSを覗くだけの、2年にも及ぶ片思いの遠距離恋愛に何らかの進展をはかるために、この春ついにお店を訪問することにしました。
もちろん相手にはまだ告白していません。
もうドキドキなんです。
今回は見るだけということで行くつもりなんですが、果たしてこの気持ちを抑えられるものか。

一目惚れが成就して、晴れてベースを作ってもらい、我が家にそれがやってきても、きっと毎日弾いたりはしないと思うんですよ。
そういえば、好きな女の子に告白するときもそうでした。
自分の想いを伝えたらなんだか妙にスッキリしちゃって、別に付き合えなくてもいいやなんて思ったりして・・・。

それでもあのベースはウチに来ないといけないんです!

「気ままに箏ライブ vol.1」の様子をアップしました。

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