カナコラム  (更新 月曜:かなこ、木曜:endy )

うまくなるにはどうしたらいい? by かなこ

2005/03/07

ども、沖縄どころか函館でも海水浴に行かないendyです。

●ドラマーS氏

先日、友人のサックス奏者O君から、東京からドラマーS氏を呼んでクリニックをするので、手伝ってくれないかと言われ引き受けることにした。
S氏は函館出身で、年齢は私よりも10歳ほど上だろうか。
NYに4年ほど住み、私にとってはとんでもなく有名なドラマーを師匠にして修行してきた人である。
日本での知名度はないが、そのキャリアは素晴らしい人である。

O君からの依頼はいつも本番まで何をやるかわからないというもので、今回も同様。
当日会ったS氏は、とても人懐っこい表情で優しそうな人だった。
しかしひとたびドラムを叩くと、そこから生まれるリズムは聴いたこともないものだった。
いや実際にはそういうリズムを出すミュージシャンはいっぱいいるのだが、実際に自分と一緒に演奏する立場となってみると全くリアリティが違うのである。
恥ずかしながら私も一緒に音を出し勉強させていただいた。

●『うまい』なんて意味がない

クリニックも後半になり、参加者からの質問コーナーとなった。
質問も最後になりかけた頃、こんな質問がでた。
「うまいドラマーになるにはどうしたらいいんですか?」
S氏はその質問を聞くと「うーん」とうなり、一呼吸おいて話し始めた。

俺もね、うまいドラマーになろうと思って頑張ってきた。チッコ相馬
でもね、NYに行っていろんなミュージシャンの演奏を見たり聴いてるうちに、『うまい』ということがとてもレベルの低いことだってことに気がついたんだよ。
例えば、クラッシックの好きな人にハードロックを聴くことは苦痛でしかない。
逆にハードロックが好きな人がクラッシックのコンサート会場にいることは耐えがたいことなんだね。
そこには『うまい』なんてことはまるで意味がないんだよ。
だって聴いてもらえなかったら何にも始まらないんだから。


●『面白い』から『かっこいい』

まず聴いてもらうにはどうしたらいいのか?
それは『面白い』と思ってもらうこと。
「あ、あいつなんか面白いことやってるな」と思ってもらう。
そうやって耳を傾けてもらう。
そこから全てが始まるんだね。
この『面白い』ということは『笑わせる』ことじゃない。
『興味をひかせる』ということね。

『面白い』の次は『かっこいい』。
『かっこいい』には上限がないの。
だって『かっこいい』人は何をやっても『かっこいい』んだから。
だからいかに『かっこよくなれるか?』に向かって努力する。
だからね、皆さんね、『うまくなりたい』なんて思わなくてもいいんです。
『かっこいい』ドラマーになってください。


これが、S氏の『うまいドラマーになるためには?』という質問に対する答え。

●『かっこいい』にはゴールがない

この話を聞いて、目からウロコが落ちる思いがした。
NYに行って、何も持っていない状態でドラムを叩いてきたS氏にとっては、『上手に叩く』ことはほとんど何も意味がなかったのだろう。
何故なら上手に叩くドラマーはあふれるほどいるのだから。
そんな中で彼を注目させたのは『面白いヤツがいる』ということなのだろう。
「面白いヤツがいるから今度一緒にやってみないか?」
そう思われればしめたものなのだ。

そこから『かっこいい』に向かっての修行が始まるのだ。
『かっこいい』にはゴールがない。
でも確かに「『かっこいい』は存在するのだ。
それは音かもしれないし、仕草かもしれないし、言葉かもしれない。
もちろん見た目だってあるかもしれない。
自分をかっこよく見せるにはどうしたらいいのか。
そこに決まった答えなどないのだ。

私にとっての「かっこいい」とはなんだろう?
うーん・・・とりあえず今晩の夕食は炭水化物を控えることにした。

3月のスケジュールを更新しました。

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